比較的重質な成分を多く含むガス層からガスを生産する場合、生産時に坑井周辺でコンデンセートが析出し、ガスの生産性が著しく低下する、所謂“コンデンセートバンキング”が大きな問題となることがあります。この現象を貯留層シミュレーションで表現するには、一般的なブラックオイルシミュレータに比べて計算負荷が高い多成分系シミュレータを使用する必要があります。また、坑井周辺の圧力分布を詳細に評価するために貯留層モデルを細かなセルに分割するなど、莫大な計算量を要するため計算時間が非常に長くなるという問題があります。
本プロジェクトでは、顧客が研究しているAdaptive Local-Global Multiphase Upscaling(ALGMP)法を用いて、坑井周辺の流体パラメータや多相流パラメータのアップスケーリングを行うことで、貯留層モデルを細分割せず、また計算負荷の小さいブラックオイルシミュレータによってコンデンセートバンキングの影響を評価できるようにし、計算時間の短縮を図りました。具体的な作業として、商用のブラックオイルシミュレータとALGMP法を連成するためのプログラムコードを作成し、実際のガスフィールドデータを用いて検証作業を行いました。これらの研究・開発作業の結果として、ALGMP法を導入する前と比べて計算時間が約1/2へと大幅に短縮され、ALGMP法の効果が確認されました。これらの作業には、長年自社で貯留層シミュレータを開発してきた経験や商用シミュレータの内部構造に対する深い理解などが様々な場面で活用されており、弊社ならではの技術によって成功したプロジェクトだと考えています。
Copyright© Japan Oil Engineering Company Ltd. (JOE), All Rights Reserved